こんにちは!再生建築プランナーのトモノンです!
2009年に「一般社団法人リノベーション住宅推進協議会」(現:一般社団法人リノベーション協議会)が設立され、2023年の現在において『リノベーション』といった言葉が広く浸透し、2022年には星崎真紀さんの人気漫画「魔法のリノベ」がドラマ化されるなど、その注目度とニーズは高まるばかりです。
今回はその人気の秘密に迫りながら、そもそも「リノベーション」と「リフォーム」って何が違うの?
そんな「今さら聞けない令和時代の建築の基本」的な話題を、自身のこれまでの経験も踏まえて、トモノン的解説をしてまいります。
1.「リノベーション」と「リフォーム」は似て非なり
先ずリノベーションとリフォームに共通していることは、戸建て住宅やマンションをはじめとした建物において、どちらも新たに再生させる建築工事だということです。
よって、表向きはどちらも似たような再生建築と言えますが、実際にはリノベーションとリフォームではその中身が異なり、その再生させるための目的(計画)と手段(工事)が違ってきます。
私はその違いにより区別しているかたちとなりますが、実際にはリノベーションもリフォームも国で定めた明確な定義はないため、メディアやウェブ上においても各々の解釈で使い分けているようです。
目的(計画)手段(工事)の違いを理解できれば、答えが見えてきます🔎
■リノベーションとリフォームの目的(計画)の違い
リフォームは老朽化に伴う現状回復
例えば…
等々…
リノベーションはこれまでの生活や住まいを刷新する
例えば…
等々…
家族構成やライフスタイルは十人十色・千差万別である中で、リノベーションはそれぞれに合った「オリジナルでオンリーワンな住まいづくり」を実現できることから、その魅力が人気の一つと言えます。
「リフォーム」よりプラスαで新たな価値を付加し、より住宅性能や生活環境にアップさせる再生建築が「リノベーション」です✨
■リノベーションとリフォームの手段(工事)の違い
リフォームは表面的な工事が多く短期間での小規模工事が中心
リフォームにおいては、先にご説明したその目的の通り、建屋における設備の入れ替えや内外装のリニューアル、その他修繕や修理といった工事がメインとなるため、比較的小工事が多く工期も短い傾向にあります。
例えば…
注記:工事期間についてはあくまで自身の経験による目安期間となり、既存建屋の状態や工事内容により決してこれに限りません
リノベーションは本質的な工事となり長期間の大規模工事が多い
リノベーションにおいては、その目的からもわかるように、工事内容や規模が大きくなり、比較的長期間に及ぶ大改修工事が多い傾向にあります。
例えば…
注記:工事期間についてはあくまで自身の経験による目安期間となり、既存建屋の状態や工事内容により決してこれに限りません
住環境の向上が目的のリノベーションは、工事内容も多岐にわたり規模も大きくなるため、その分工事期間も長くなってきます
2.リノベーションとリフォームのメリット・デメリットを比較
リノベーションとリフォームの違いをご理解いただいたうえで、それぞれのメリット・デメリットについて、解説してまいります。
どちらにも一長一短があり、何を最も重要視するかによって、工事選択の決め手となるかもしれません。
■リフォームのメリット
工事内容は表面的でその範囲も限定的であることから、比較的短期間でのリフォームが可能。
リフォームは現状回復が目的であり、工事期間も短く必要最低限の費用で工事ができるため、予算を最小限に収めたい場合に最適です。
基本的にリフォーム工事の場合は住みながらの工事が可能で、工事期間中に仮住まいをするといった必要がないため、工事以外の費用や負担が少なく済みます。
■リフォームのデメリット
現状回復が目的であるリフォームにおいて、建築設計の自由度が低く最低限の工事内容となるため、生活環境の向上は図りにくく基本的には現状維持となります。
リフォームでは水廻りの配置や間取り、生活や家事動線はそのままとなるため、現状回復により部分的な不便が解消されても、暮らしや住まい全体における利便性や快適性は期待できません。
限定的なリフォーム工事において、例えばリビングだけは内窓を設置して断熱化を図り、キッチン等の他の場所がそのままの場合、リビングは暑さや寒さが改善され快適でも、他の場所で過ごすとその温度差で不快に感じるといった、環境格差が発生するケースがあり、心身共に悪影響を及ぼすことがあります。
■リノベーションのメリット
日々の暮らしや将来の生活におけるライフデザインをもとに、生活動線を見直し水廻りの配置や間取りを変更したり、家事の負担軽減を図るため収納や物干しスペースを新設したりと、既存建屋の状況によっては制限がある場合もありますが、高い割合で自由にマイスタイルな設計が出来ます。
内装インテリアにおいても、定番のヴィンテージやブルックリンスタイル、女性に人気の北欧やカフェ風デザインなど、お好みでコーディネートが可能です。
住宅を取得するにあたり、新築や中古物件の購入以外にも、祖父母や親をはじめ親戚から家を相続し受け継ぐ、そのうえでリノベーションをして夢のマイホームとすることも可能です。
又、実家を2世帯用にリノベーションし、親世帯と同居するかたちで家を持つケースも増えています。特に共働きのご夫婦にとっては、子供の面倒を見てもらえる等、育児や家事の負担も軽減されるといったメリットも多いです。
リノベ住宅を視野に入れることで、予算や場所も含め、ご自身やご家族に合わせた住宅取得の選択肢が広がります。
新築を建てる場合、基本的に土地代に上物の建築費に加え、諸経費も含めた予算が必要です。又、建築予定地によっては造成や地盤調査・改良費用が必要になったり、その土地に水道を引き込むための工事費用や、上物以外の外構工事は別途となります。又、諸経費の一部は不動産取得に伴う税金を多く払うこととなります。
それと比較し中古住宅を取得しリノベーションする場合、基本的にその物件購入費用+工事費+諸経費だけとなり、総額で比べると新築よりもローコストで住宅を取得できるケースが多いです。
又、新築を立てて移り住むより、ご自宅や今ある不動産物件をリノベして住む方が、税金の面でも余計な費用が掛からないメリットがあります。
築年数が古い建物であっても、リノベーションにより住宅性能の改善を図り高めることで、その資産価値が上がったり、逆に下がりにくくなったりするケースがあり、優良なストック住宅として次世代に引き継ぐことも可能です。
これまでの約30年周期で建物を壊しては建て直すといった「スクラップ&ビルド」の考えとは違い、「活かせるもの活用して再生させる」といった考えのもと、解体による廃材の発生や資源の無駄遣いを大幅に減少させるため、リノベーションは環境保護にも繋がります。
■リノベーションのデメリット
住環境の向上が目的のリノベーションは、その工事内容をはじめ規模や範囲も広範囲となるため、完成までに時間を要します。
リフォームに比べて大規模工事となる分、工事費用が高くなります。
リノベーションにおいても住みながらの工事は可能となりますが、建物の状況や工事内容によっては困難なケースもあり、その際は工事期間中仮住まいで生活していだだくことになります。
リノベーションは新たな住宅取得の選択肢として注目され、新築をゼロから建てるよりもコストが掛からないケースが多く、それに加えてマイスタイルな住まいづくりが出来ることも人気の一つです。
3.リノベーションとリフォームの工事費用の目安
それぞれの工事費用について、表にまとめてみましたので、今後の検討材料の一つとして参考にしてみてください。
但し、実際は既存の状態や工事内容、使用する材料や建材、設備機器のグレードや人件費の地域差などで、金額が変動しその幅も大きいため、あくまで一般的な目安として捉えてください。
■リフォーム工事の費用目安の一例
システムキッチンの交換 | 50~150万円 |
システムバスの入れ替え | 80~200万円 |
トイレ便器交換 | 15~50万円 |
洗面化粧台交換 | 10~50万万円 |
内装クロス張替え(6畳間) | 4~5万円 |
屋根塗装工事(トタン屋根20坪) | 17~42万円 |
外壁塗装(20坪) | 60~120万円 |
フローリング工事(6畳間) | 15~20万円 |
■リノベーション工事の費用目安の一例
平屋住宅フルリノベ(25坪) | 1400~2000万円 |
2階建住宅フルリノベ(32坪) | 1400~2000万円 |
2階建住宅1階スペースフルリノベ(43坪) | 1600~2200万円 |
1階スペースゾーンリノベ(13坪) | 400~1000万円 |
マンションフルリノベ(12坪) | 600~1200万円 |
自宅カフェリノベ(8坪) | 300~600万円 |
しかし、それは自分仕様であるという裏返しであり、最適な工事による最良な住まいづくりだと言えるかもしれません。
リノベはある意味オーダーメイド住宅であるため、その費用も施主様によって違ってきます。
4.リノベーションorリフォーム 結局どちらがオススメ?
ここまでリノベーションとリフォームの違い、メリット・デメリットに解説してまいりましたが、結局のところどっちがいいの?と思われている方のために、オススメのチェック項目でその適正を図ってみてください。
■こんな方にはリフォームがオススメ!
・短期間の工事で最小限の費用で工事したい方
・費用の貯蓄に合わせて計画的に工事をしていきたい方
■こんな方にはリノベーションがオススメ!
・マイスタイルでオンリーワンな暮らしと住まいにしたい方
・住宅を受け継ぎ再生させたい方
・眠っている不動産を活用し資産価値を高めたい方
・新築よりお得に住宅を取得されたい方
空き家等の使用していない建屋を、貸家やシュアハウス等の収益物件として活用したり、老朽化などの理由により空室の目立つ集合住宅をリノベーションし、収益物件の活性化を図ったりと、資産価値を高める手段としても人気があります。
どのオススメポイントに当てはまるか、今後の工事検討の判断材料として検討してみてください。
5.まとめ
自由な発想で思い思いにデザインされたリノベーション住宅は、その一件一件が個性的で魅力があり、そこで暮らす人は活き活きとした時間を過ごされている印象です。
それは時間の経過の中で家族構成やライフスタイルが変化し、それと同時に住みづらくなった建屋を再生させることで、そこに新たな価値と共に幸福が生まれるからではないかと思います。
古くなったものを壊したり廃棄することは簡単ですが、本当に再生可能な建物(資源)ではないのかを、一度立ち止まって考えていだだき、戸建て住宅においてはその家の歴史や思い出も含め、再生建築により繋いでいく選択も検討していただければ幸いです。